なぜ画像検査における照明選定が重要なのか?
画像検査の精度は、照明の選定と設定によって大きく左右されます。適切な照明を使用しないと、以下のような問題が発生し、検査の信頼性が低下します。
問題 | 影響 | 発生する可能性のあるトラブル |
---|---|---|
影の発生 | 欠陥が部分的に隠れる | 傷や異物が検出されない |
反射の影響 | 画像の一部が過剰に明るくなる | 金属や光沢のある素材の検査が困難になる |
照明のムラ | 明るさが不均一 | AIや画像処理アルゴリズムが誤検出を起こす |
波長の選定ミス | コントラスト不足 | 欠陥と正常部分の違いが曖昧になり、誤判定が増える |
照明は、検査対象の欠陥を際立たせ、カメラが捉えやすい画像を生成するための最も重要な要素の一つです。本記事では、照明の種類、波長、角度、設置方法を体系的に解説し、最適な選定方法を紹介します。
1. 画像検査に適した光源の種類
照明の種類は、検査対象や目的によって異なります。以下に、主な光源とその特徴、適用例を示します。
光源の種類 | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|
LED | 長寿命、省エネ、光の色や形状のバリエーションが豊富 | 一般的な外観検査、金属・樹脂部品の傷検出 |
蛍光灯 | 均一な光を照射できるが、寿命が短い | ラベル・印刷物の検査、食品のパッケージ検査 |
ハロゲン | 可視光の連続スペクトルを持ち、自然光に近い | 色の識別が必要な検査(塗装、食品の鮮度検査) |
レーザー | 指向性が高く、特定の対象を強調できる | 3D計測、異物・微細な傷の検出 |
UV(紫外線) | 目に見えない欠陥を可視化 | クラック(ひび割れ)、コーティングの欠陥検出 |
IR(赤外線) | 透過性の高い素材の異物検出 | 食品・プラスチックの内部異物検査 |
LEDは最も汎用的な光源ですが、用途によってはUV光や赤外線が効果的な場合もあります。特に、微細な傷や内部の異常を検出する際には、適切な波長を持つ光源を選定することが重要です。
2. 波長(色温度)による照明の選定
照明の波長(色温度)が異なると、対象物の見え方やコントラストが変化します。波長の違いを活用することで、より正確な検査が可能になります。
波長(光の色) | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|
白色光(標準) | 可視光の全波長を含み、バランスが良い | 一般的な外観検査(食品、金属、プラスチック) |
赤色光(630nm) | 金属表面の反射を抑え、コントラストを向上 | 金属加工品の傷検出、電子基板の外観検査 |
青色光(470nm) | 透明素材の傷を強調 | プラスチックやフィルムの異物検出 |
赤外線(IR 850nm) | 物体内部の異物を検出 | 食品やプラスチック内部の異常検査 |
紫外線(UV 365nm) | クラック(ひび割れ)や異物を蛍光発光させる | 印刷のセキュリティマーク、塗装やコーティングの不良検出 |
波長選定のポイント
- 金属の傷検出 → 赤色光
- 透明フィルムの異物検出 → 青色光
- 食品の異物混入検査 → 赤外線
- 印刷物やコーティング検査 → 紫外線
検査対象物の特性に応じて、最適な波長を選択することが重要です。
3. 照明の方向(入射角)の選び方
照明の入射角を調整することで、欠陥の視認性を大きく向上させることができます。
照明の種類 | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|
直射照明 | 均一に明るく照らすが、影が発生しやすい | 印刷物、パッケージの品質検査 |
拡散照明 | 均一な光を広範囲に拡散し、影を抑える | 反射しやすい表面の検査(ガラス、樹脂) |
斜光照明 | 低い角度から照射し、微細なキズや凹凸を強調 | 金属表面の傷、ひび割れの検出 |
同軸照明 | レンズと同じ軸上から光を入れ、反射を抑える | 鏡面の傷、印刷の文字検査 |
ドーム照明 | 全方向から均一に照射し、影を完全に抑える | 反射が強い対象物の検査(鏡面、光沢のある素材) |
選定ポイント
- 金属表面の傷検出 → 斜光照明
- 光沢のある素材の検査 → ドーム照明 or 同軸照明
- 食品や印刷物の品質検査 → 直射照明 or 拡散照明
4. 照明配置の最適化
適切な照明を選んでも、設置方法が適切でなければ、検査精度は向上しません。以下の点を意識しましょう。
課題 | 対策 |
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影の発生 | 拡散光を利用し、複数の光源を配置 |
反射が強すぎる | 偏光フィルターを使用、または同軸照明を採用 |
明るさが不均一 | 複数の照明を配置し、均一な照射を実現 |
検査環境の光の影響 | 検査エリアをカバーで囲い、外光の影響を排除 |
特に、金属や鏡面の検査では、光の反射をコントロールすることが非常に重要です。同軸照明やドーム照明を活用することで、反射の影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
画像検査の精度を向上させるためには、適切な照明の種類・波長・角度を選び、検査環境に合わせて配置を最適化することが重要です。
ポイントまとめ
✔ 検査対象に応じた波長を選定(赤色光、青色光、赤外線、UV)
✔ 影や反射を抑えるための照明配置を工夫
✔ 環境光の影響を排除し、安定した明るさを確保
適切な照明を選定し、最適な条件で運用することで、画像検査の精度を最大限に引き出しましょう!
