なぜストロボ照明とシャッターの同期が重要なのか?
画像検査では、高精度な欠陥検出を実現するために、ブレのないクリアな画像を取得することが不可欠です。特に、高速で移動する対象物を撮影する場合、通常の連続光では露光時間を短縮しようとしても十分な光量が得られず、暗い画像やノイズの多い画像になってしまうという問題が発生します。
このような場合に有効なのが、ストロボ照明(フラッシュ照明)です。ストロボ照明は、極めて短い時間(数マイクロ秒〜数ミリ秒)だけ強力な光を発することで、シャッタースピードが短くても十分な明るさを確保し、鮮明な画像を取得することが可能になります。
しかし、ストロボ照明を適切に活用するためには、発光のタイミングとカメラのシャッターが完全に同期していることが必須です。もし同期がずれてしまうと、以下のような問題が発生します。
- シャッターが開く前にストロボが発光すると、画像が暗くなり欠陥が検出できない
- シャッターが閉じるタイミングでストロボが発光すると、部分的に暗い画像になり、誤検出が発生する
- ストロボの発光が遅れると、対象物がブレて撮影され、検査が不可能になる
このような問題を防ぐためには、ストロボの発光とカメラのシャッターのタイミングを精密に同期させる技術が必要です。本記事では、ストロボとシャッターの同期方法、適切な設定のポイント、実際の運用における注意点について詳しく解説します。
1. ストロボ照明とシャッターの基本動作
ストロボ照明の発光特性
ストロボ照明の最大の特徴は、短時間の強力な光を発することで、高速で動く対象物をブレなく撮影できることです。この特性を利用することで、従来の連続照明では難しかった動体検査が可能になります。
ストロボ照明には、以下の2つの発光方式があります。
パルス発光(短時間発光)
- 数マイクロ秒〜数ミリ秒の短時間だけ強い光を発する方式。
- 高速で移動する対象物を静止したように撮影できる。
- 金属部品、電子基板、食品包装など、動きが速い製品の検査に適している。
- 例)流れるコンベア上のボトルにラベルが正しく貼られているか検査する場合、ストロボを使用すればブレのない鮮明な画像を取得できる。
連続発光(ハイフラッシュ)
- シャッターの開放中に持続的に光を照射する方式。
- 均一な明るさを確保し、広範囲の対象物を均一に照射できる。
- 静止物の検査や、ストロボの閃光が影響を与える環境ではこちらを使用。
- 例)電子基板の目視検査補助として、安定した光量を確保する場合に適用される。
このように、ストロボ照明の特性を理解し、適切に選定することで、画像検査の精度を最大限に向上させることができます。
2. ストロボとシャッターを同期する方法
ストロボの発光とカメラのシャッターを同期させるためには、トリガー信号を用いた制御が必要です。一般的な同期方法は以下の3つに分類されます。
カメラ主導(ストロボをトリガー)
カメラがシャッターを開くタイミングで、ストロボに発光信号を送る方式です。
この方式では、カメラのシャッタータイミングを基準にストロボが発光するため、シャッターが開いている瞬間に確実に光を当てることが可能です。
メリット
- カメラのシャッタータイミングと完全に同期するため、撮影のブレが発生しにくい。
- 高速撮影に適しており、動く対象物の検査に向いている。
デメリット
- ストロボの発光遅延(数マイクロ秒〜ミリ秒)がある場合、発光タイミングを調整しなければならない。
- カメラ側のトリガー機能を利用するため、対応する機種が限られる。
具体的な接続方法
- カメラのトリガー出力端子をストロボのトリガー入力に接続する。
- シャッターが開く直前にトリガー信号を送信する。
- ストロボが発光し、適切なタイミングで照明が当たる。
ストロボ主導(カメラをトリガー)
ストロボが発光するタイミングでカメラにシャッター信号を送る方式です。
この方式では、ストロボ側の発光タイミングが優先されるため、光量の安定性を重視する場合に有効です。
メリット
- ストロボの発光タイミングがブレないため、安定した光環境を確保できる。
- カメラの設定に依存せず、ストロボ側で制御できる。
デメリット
- カメラの応答遅延を考慮する必要があるため、シャッターラグが発生する可能性がある。
- 露光時間の調整が難しくなることがある。
具体的な接続方法
- ストロボの発光制御装置からカメラのトリガー入力へ信号を送信する。
- ストロボが発光し、同時にカメラのシャッターが開く。
- 正確な発光と撮影の同期を実現する。
外部トリガー制御
この方式では、カメラとストロボの両方をPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー)やFPGAを使用して制御します。
この方式は、生産ライン全体と完全に同期する必要がある場合に適しています。
メリット
- 高速なリアルタイム制御が可能で、生産ラインと完全に同期できる。
- エンコーダやフォトセンサーと連携することで、位置ズレを最小限に抑えられる。
デメリット
- 外部装置が必要なため、導入コストが高くなる。
- システム設計が複雑で、専門的な知識が必要。
具体的な接続方法
- センサーが被写体の位置を検出(エンコーダやフォトセンサー)。
- PLCがカメラとストロボに同時にトリガー信号を送る。
- タイミングを最適化して撮影し、生産ラインと同期を取る。
まとめ
ストロボ照明とカメラのシャッターを正確に同期させることで、ブレのない高解像度の画像を取得し、検査精度を向上させることができます。同期方法には、カメラ主導、ストロボ主導、外部トリガー制御の三つがあり、用途や環境に応じた適切な方式を選択することが重要です。ストロボの発光遅延やカメラのシャッターラグを考慮し、トリガー信号の調整を行うことで、撮影タイミングを最適化できます。また、PLCやエンコーダを活用することで、より精密なライン同期が可能になります。実際の導入では、オシロスコープを用いたタイミング測定や、環境に応じた露光時間の調整が不可欠です。適切な設定と制御により、安定した検査環境を構築し、高速・高精度な画像検査を実現しましょう。
