露光時間とは? 画像検査の成功を支える基本知識と実践的設定方法

露光時間とは、カメラのセンサーが光を受け取る時間を意味します。この時間が画像の明るさ、動きの表現、鮮明さに直接影響を与え、特に画像検査では品質管理の精度を大きく左右します。本記事では、露光時間の基本的な仕組みから、画像検査での適切な設定方法、そして現場で役立つ実践的なヒントまでをわかりやすく解説します。


露光時間とは?~光を取り込む時間の調整が鍵~

露光時間とは、カメラのシャッターが開いている間にセンサーが光を取り込む時間を指します。この時間の長さを調整することで、画像の明るさや動きの表現方法をコントロールします。

露光時間の設定による違い

  • 短い露光時間(高速シャッター)
    → 動きの速い対象物を静止したように撮影する。
    :高速生産ラインの製品検査。
  • 長い露光時間(低速シャッター)
    → 光を多く取り込むことで暗い環境でも明るい画像を得る。
    :静止した部品や微細な表面検査。

露光時間の設定は、検査環境や対象物に応じて調整が必要です。適切な設定により、検査精度が向上し、効率的な品質管理が可能になります。


露光時間が画像検査に与える影響

露光時間は、画像検査における以下の3つの要素に影響を与えます。

1. 画像の明るさ

露光時間が長いほど光を多く取り込めるため、画像は明るくなります。逆に短い露光時間では、光量不足により暗い画像が生成される可能性があります。

  • 短い露光時間:明るい照明が必要。
  • 長い露光時間:暗い環境でも明るさを確保できるが、動きによるブレが発生する可能性あり。

2. 動きの静止化

露光時間の調整により、動いている対象物をどのように捉えるかが変わります。

  • 短い露光時間:高速で移動する対象物の動きを静止させる。
    :コンベアライン上を流れる製品の外観検査。
  • 長い露光時間:動きが「ブレ」として表現される。検査ではブレを避けるために注意が必要。

3. 鮮明さと精密さ

長い露光時間では、カメラの揺れや対象物の動きによりブレが発生しやすくなります。一方、短い露光時間では光量不足が課題となるため、適切な照明の使用が求められます。


画像検査における露光時間の重要性~精度を左右する設定~

画像検査で露光時間を最適に設定することは、検査の成功に直結します。以下は、露光時間が重要となる具体的な理由です。

高速移動する対象物の検査

  • 課題:高速で移動する製品を静止して捉え、欠陥を見逃さない。
  • 解決策:露光時間を短く設定(例:1/2000秒以上)し、高速シャッターで動きを止める。

暗い環境での検査

  • 課題:暗い照明条件下で鮮明な画像を得る。
  • 解決策:照明を補強し、露光時間を延ばす(例:1/50秒~1秒)。これにより光量を確保し、明るい画像を生成。

微細な表面の検査

  • 課題:微細な傷や異物を正確に検出する。
  • 解決策:長めの露光時間を使用して光量を増やし、拡散照明を併用して影を抑える。

露光時間の設定方法~現場で使える実践的なヒント~

露光時間の設定は、対象物や環境条件に応じて適切に調整する必要があります。

1. 対象物の動きを考慮

  • 高速で移動する対象物:短い露光時間(例:1/1000秒以上)を設定し、動きを静止。
    → 例:回転部品の検査、ライン上の高速製品検査。
  • 静止している対象物:長い露光時間(例:1/50秒~1秒)を設定し、光量を多く取り込む。
    → 例:静止した基板や部品の詳細検査。

2. 照明との連携

露光時間の設定と照明の調整はセットで考える必要があります。

  • 高輝度LEDやストロボ照明を使用:短い露光時間でも十分な光量を確保。
  • ISO感度を調整:ISO感度を上げることで光量不足を補います。ただし、高感度ではノイズが発生しやすい点に注意。

3. 環境条件を整える

  • カメラの固定:長い露光時間を使用する場合、カメラを固定して揺れを防ぎます。
  • 反射や影の抑制:偏光フィルターや照明の角度を工夫して、対象物全体を均一に照らします。

画像検査での露光時間の応用例

応用例1. 高速ラインでの検査

  • 課題:高速移動する製品の外観検査。
  • 設定例:露光時間を1/2000秒に設定し、動きを完全に静止。
    工夫:高輝度照明を使用して光量を補う。

応用例2. 微細部品の検査

  • 課題:微細な傷や異物を検出する。
  • 設定例:露光時間を1/50秒程度に設定し、光量を十分に確保。
    工夫:拡散照明を併用して影を最小限に抑える。

応用例3. 回転部品の検査

  • 課題:回転中の部品表面の傷を検出。
  • 設定例:露光時間を1/1000秒に設定し、ストロボ照明を同期。
    工夫:照明のタイミングを調整して鮮明な画像を取得。

注意点~露光時間設定で失敗しないために~

1. バランスの取れた設定

短い露光時間では光量不足に注意し、長い露光時間ではブレのリスクを考慮しましょう。

2. 試験撮影で調整

実際の検査対象を試験撮影し、得られた画像を確認しながら設定を微調整します。

3. 環境条件を考慮

振動の多いラインや反射が強い対象物では、防振装置や偏光フィルターを活用して対策を講じます。


露光時間を理解して検査精度を向上させる

露光時間は、画像検査における精度と効率を左右する重要な要素です。適切な設定を行うことで、動きの速い対象物を正確に捉えたり、暗い環境でも鮮明な画像を取得したりと、検査の品質を大幅に向上させることができます。

設定のポイント

  1. 対象物の動きに応じた露光時間を選択する。
  2. 光量不足を補うため、照明やISO感度を調整する。
  3. 試験撮影を活用し、設定を微調整する。

露光時間を正しく理解し、現場で活用することで、画像検査の信頼性と効率性を高めることが可能です。ぜひ実際の検査業務にお役立てください!

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