なぜ画像検査におけるカメラ選定が重要なのか?
製造業における画像検査は、品質管理を自動化し、精度を向上させるための重要な技術です。しかし、画像検査AIや画像処理アルゴリズムの性能を最大限に発揮するためには、適切なカメラの選定が不可欠です。
誤ったカメラを選定してしまうと、次のような問題が発生する可能性があります。
- 低解像度のカメラを使用すると、微細なキズや欠陥を見逃してしまう
- 動いている製品を撮影する際にシャッタースピードが遅く、ブレが発生する
- 照明環境とカメラの感度が合っていないため、画像が暗く、誤検出が増える
- 適切なレンズや画角が設定されていないため、検査範囲がズレてしまう
このような問題を回避し、検査精度を最大限に高めるためには、検査対象や環境に適したカメラを選定することが不可欠です。本記事では、画像検査において最適なカメラを選ぶための基準と具体的な選定方法を詳しく解説します。
カメラ選定のための主要なチェックポイント
カメラを選ぶ際には、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
項目 | 影響する要素 | 選定のポイント |
---|---|---|
解像度(画素数) | 微細なキズや欠陥の検出 | 欠陥のサイズに応じて適切な解像度を選ぶ |
センサーサイズ・画素サイズ | 画像の明るさ・ノイズの発生 | 暗所や低照度環境では、大きめのセンサーを選ぶ |
フレームレート(fps) | 動く製品の撮影 | 高速ラインでは100fps以上が理想 |
シャッター方式 | 動体のブレ | 高速動作対象にはグローバルシャッターが有効 |
カラーカメラ or モノクロカメラ | 検査内容(色の識別が必要か) | キズや異常検出ならモノクロ、色識別ならカラー |
レンズ・撮影範囲 | 検査対象のサイズ・焦点距離 | 対象物のサイズと距離に合った焦点距離を選択 |
照明環境 | 画像のコントラスト・影の影響 | 均一な照明を確保し、最適な光源を選択 |
次に、それぞれの項目について詳しく説明していきます。
1. 解像度(画素数)の選定
解像度は、検査対象の細部をどれだけ詳細に捉えることができるかを決定する要素です。解像度が不足すると、微細な欠陥を見逃してしまい、検査の精度が低下する可能性があります。
解像度の選び方
- 低解像度(1MP〜5MP)
- 大きな異常(形状欠陥や大きな傷)の検出向け
- 製品の有無検査、パーツの位置確認に適している
- 中解像度(5MP〜12MP)
- 一般的な外観検査に適しており、小さな傷や異常を検出可能
- 金属加工品、食品、プラスチック成形品などに使用
- 高解像度(12MP以上)
- 微細な傷、寸法の誤差、細かい異常を検出するために必須
- 半導体、電子部品、医療機器など、極めて高精度な検査が必要な場合に利用
解像度が高いほど精密な検査が可能になりますが、高解像度のカメラは処理負荷が大きくなるため、画像処理システムの処理能力とのバランスを考慮することが重要です。
2. センサーサイズと画素サイズ
カメラのセンサーサイズと画素サイズは、撮影時の光の取り込み量やノイズの発生に影響を与えます。
センサーサイズ
- 小型センサー(1/3インチ以下)
- コストが低いが、低照度環境ではノイズが発生しやすい
- 中型センサー(1/2インチ〜2/3インチ)
- バランスが良く、多くの産業用途で使用
- 大型センサー(1インチ以上)
- 低ノイズ・高感度で暗所でも高精度な検査が可能
画素サイズ
- 小さな画素サイズ(1.5μm以下)
- 高解像度だが、暗所ではノイズが出やすい
- 大きな画素サイズ(2.5μm以上)
- 光の取り込み量が多く、暗所での検査に適している
暗い環境での検査では、できるだけ大きなセンサーサイズ・画素サイズを持つカメラを選ぶと、ノイズが少なく安定した検査が可能になります。
3. フレームレート(fps)とシャッター方式
フレームレートの選定
- 30fps以下:低速ラインや静止物の検査向け
- 30〜100fps:一般的な製造ライン向け
- 100fps以上:高速ライン向け(ボトル、食品包装など)
シャッター方式の選定
- ローリングシャッター(一般的なカメラ)
- 低速な製造ラインに適しているが、高速移動する対象には不向き
- グローバルシャッター(産業用カメラ向け)
- 高速なラインでもブレなく撮影できる
4. モノクロカメラ vs. カラーカメラ
モノクロカメラが適しているケース
- キズ、汚れ、ひび割れの検出
- 形状や寸法検査
- コントラストを重視した異常検出
カラーカメラが適しているケース
- 色ムラ、変色の検査
- 印刷物や食品の外観検査
5. レンズと照明の選定
レンズの選定
- 短焦点レンズ(広角):広い範囲を撮影できるが、歪みが発生しやすい
- 長焦点レンズ(望遠):細部の撮影に適しているが、視野が狭い
照明の選定
- 拡散光:均一な明るさを確保しやすく、影を防ぐ
- 斜光照明:傷や凹凸を強調して検出しやすくする
- 偏光フィルター:反射を抑え、金属やガラスの検査に有効
まとめ
画像検査において、カメラの選定は検査精度を左右する最も重要な要素のひとつです。検査対象に応じて、解像度、センサーサイズ、フレームレート、シャッター方式、レンズ、照明を適切に選ぶことで、AIや画像処理の性能を最大限に引き出すことができます。
導入時には、実際の生産環境でテストを行い、最適なカメラ設定を確認することが成功のカギとなります。適切なカメラを選定し、高精度な外観検査を実現しましょう。
